12月テーマ「装う」@上弦 | 自分を基盤にして選択する
初めまして、美彩と申します。レディス服のデザイナーをしています。
この度「装う」というテーマを頂いて、服を生産する立場からの想いをお話させて頂きたいと思いました。
私は専門学校卒業後、5年間職を転々としていました。
消えてしまいたくなる様な日々の中『それでも私は美しいものを作りたい』という思いが消えなかったのは、がむしゃらな学生時代があったからだと思います。
今回はそんな学生時代に出会った恩師の言葉を交えてお話させて頂けたらと思います。
自分を基盤にして選ぶ
学生時代アクセサリーの授業でお世話になった坂本先生。
不思議なご縁で私の母も学生時代お世話になっていたので、相当お歳を召していたと思います。
先生はご病気を患われながらもいつもエレガントに装われ、亡くなられる少し前まで教壇に立たれていました。
後から聞いた話では歩くのも大変な状況でも、美術館に行くには綺麗な靴じゃなきゃ失礼だと、スニーカーなどは履かなかったということでした。
また、手術で体に入れていた金具を取り出した後アクセサリーにしてしまうという(ショップに並んでいたら絶対に釘づけになるくらい素敵でした!)なんともファンキーな先生でした。
そんな坂本先生が残してくださった言葉に、両極のものがあります。
ひとつは、
「金持ちが贅沢しなきゃ良いものは残っていかない」
先生が集められたアンティークのレースや香水瓶は時代を超えて私達に溜め息をつかせました。
もうひとつは、
「お金が無くても綺麗な布が一枚あれば良い」
先生は鮮やかな布から土っぽい雰囲気の布まで、その布が持つ美しさを引き出して首元を彩っていらっしゃいました。
どちらも「自分」を基盤にして、美しいものを求める姿勢が表れていると思います。
フェアトレードを知っていますか?
さて、それでは今後どうやって服を選ぶのか?考えていくにあたって、今のファッション業界が抱える問題をお話させてください。
フェアトレード:開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」。
最近ではエシカルファッション(エシカル:倫理的・道徳上の意味)という言葉もよく聞かれます。
今現在、私達先進国の人々が着る服を作る為に、発展途上国の多くの人々が人権を無視した働き方を強いられています。
凄まじい速さで移り変わる流行。
流行の服は安いところで取り入れるという方も多いと思います。
でも一度考えてほしいのです。
990円のジーパンは誰も無理を強いられずに作れるでしょうか?
ファッション業界では大きな問題になりつつも。
取り組むには企業にも負担がかかる為、多くは見て見ぬふりをされています。
この問題でよく話題になるのは皆さんもご存知のファストファッションブランド。
でもこれはファストファッションに限ったことではありません。
私が取引をしている工場さんもまた下請け工場があります。
それは例えば、刺繍、プリント、はたまたポケットの補強ステッチだけをするところ。
彼らがどんな環境で働いているのか知る余地はありません。
つまり見えないところで私も加担している可能性は大いにあります。
好きな服に関わっている私にとって、悲しい現実のひとつです。
さて、そんな私は今までファストファッションブランドで服を買ったことがありません。
それはフェアトレードを知る以前から。
業界新聞WWDの編集長をされていた山室先生の言葉がきっかけでした。
「君達の様な服飾学生が、世界のデザイナーが苦労して作り上げたコレクションをまるパクリした服を買うな」
もちろん全ての服がまるパクリされている訳ではありませんが、速さを求める余りにこういったことは平然と行われています。
私自身会社では全てを選ぶことは不可能な為、ここだけは守ろうと自分の中で線引きしている部分です。
流行に惑わされて消費されているのは生産者が消費者か。
おそらく、どちらも。ではないでしょうか?
わたしたちは消費されない
ファストファッションの服を買わないで!と押しつけるつもりは私にはありません。
私自身流行の服を作っていますし、全身フェアトレードで揃えるのも実際まだまだ難しいと思います。
ただ、『消費されない』。
主体的に選ぶ側に立っていた方が、服との良い関係が築ける気がしています。
「買い物は投票だ」という言葉があります。
それは生産者へだけではなく、自分にも、かもしれません。
興味を持って頂いた方はぜひ、文末のリンクをご覧ください。
服が作られる背景を知ることで見えてくる世界があると思います。
一度より主体的になって、服との関係を見直してみませんか?
おしゃれは正義です!
フェアトレードについてもっと良く知りたい方は
興味を持って頂いた方はぜひ下記を参考になさってください。
私もまだまだ勉強中、自身の仕事のあり方と主体性のバランスを模索中です。
・日本のフェアトレードブランド
People tree
http://www.peopletree.co.jp/index.html
・ファッション産業の闇を捉えたドキュメンタリー映画
「THE TRUE COST」 予告映像
https://m.youtube.com/watch?v=tR5giBWTPX8
・ベルリンの街中で行われた激安Tシャツ自販機の実験映像
https://www.youtube.com/watch?v=KfANs2y_frk
(日本語解説が必要な方はこちら)
美彩(みさ)
2011年文化服装学院アパレルデザイン科卒業。
母校での教員、スタイリストアシスタントなどを経て今年5月よりかねてより目標だったデザイナーに就職。
特技は服、アクセサリー、インテリアなど身の回りのものを作ること。
ただ今刺繍絵本を作るべく長期を見据えて活動中。

『私たちの等身大から生きる、現在進行形の暮らし。』
「こころ♪生きる♪くらし♪」は、 自分の「こころ」を満たしながら、 等身大の自分自身から、社会の役に立って「生きる」。 受け継がれてきた日本の美しさや豊かさを現代的にアレンジして「くらし」ていく。 そんなコンセプトで、体現されている人を紹介したり、ヒントをシェアしているサイトです。
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