インタビュー・平尾暁子さん(part1:移住とライフスタイル編)後編
【名前】平尾暁子
【年齢】38歳
【職業】アロマセラピスト
【出身地】神奈川県
【現住所】神奈川県
横浜・川崎で暮らしていたが、震災を機に住環境について考えるようになり、
2012年に鎌倉に引っ越しをした平尾暁子さん。
鎌倉にて37歳の時に、子供を授かり、出産。育児の中でまた考えるところがあり、
2015年、子供が10ヶ月の時に横浜へと引っ越す。実家近くに腰を落ち着ける。
鎌倉くらし、妊娠出産を経て感じた、心境の変化などを伺いました。
ー取材:佐藤美央、大村真帆 文章:平尾暁子、佐藤美央
part1:移住とライフスタイル編 (後編)
5.新しい横浜市での暮らし
~周りの環境も自分らしくてほっとする~
―横浜市へと引っ越してきて何を感じていますか?
引っ越ししてきた当初は、「ここは空気が汚い」「雰囲気の悪い場所だな」など、感じるたびに落ち込んでいました。単純に体もきつかったです。
そんなときに、土地の歴史や由来をこの土地の住民の方から聞くことで、納得できたところがありました。近くの雰囲気が悪い場所は、沼地で使わなくなった田んぼに不要なものをどかどか捨てていたことがあったから、ここはそういう土地なんだな。とか。逆に素晴らしい田圃だったころの名残が残っている美しい公園を知ったりとか。
土地の来歴を理解できるようになったら、いろんな歴史があって、この土地自体が悪いってことではないし、今住んでいる人が悪いわけではない、という当たり前のことに気づいたんですね。理解ができれば、愛情が生まれるというか。縁あって住んでいる土地をジャッジすること自体がとても傲慢なことだなと思えてきたんです。
きっと、その土地の気のいい・悪いって、そこに住んでいた人がどれだけ大事にしてきたかなんだと思います。だから自分の土地は、綺麗に保つ責任を持とうと思ってから、ここは空気が汚い!とか、変に神経質になることがなくなってきました。
そんなことよりも今日の掃除、自分が気持ちよく暮らすこと。それができないのに、住んでる土地を批判するなんておかしいよねって。そしてどの町でも、すべてのエリアが感じ良いというところはないと思います。
今住んでいる家の近所はとてものどかで好きなので、そういう点では自分らしい場所を選べたなと納得しているんです。
―ご近所の方とのコミュニケーションが濃いですね。
駅から遠くの奥まっている住宅地だから、その場所にいるのは住民だけ。だから村みたいな場所なんです。犬のお散歩でパトロールをしてくださるおじさんがいらっしゃったり、近所の子供が遊びに来て、娘と兄弟みたいに遊んだりしています。
なんとなくの勘でここがよさそうだなとえらんだ家ですが、周りの環境も自分らしくてほっとするものだったので、本当に直感ってバカにならないなーと思います。空気が悪いくらいでは人は死なないと思います。自然がなくても人は生きていける。私は、人の方が重要でした。それが得られるのはこの横浜の住環境なんだなと直感でキャッチしたんだと思います。
きっと、人からもらう力も含めての環境なんですよね。それが生活の安心感につながるんだと思います。鎌倉に住んでいるときは、私が体調悪くなったら誰が娘の面倒をみるんだ、というプレッシャーがあったからか、体調を崩しがちでした。けど、今の場所に引っ越してからは不思議と体調を崩すこともないんですよね。
―鎌倉に住む前の家はどうでしたか?
なかなかいい縁がつながらなくて、今までずっと納得のいかない物件に住んでいました。急に引っ越さなきゃいけないとか、猫がOKの物件じゃなきゃいけないとか。今思えば、人間的に未熟で、まだ自分らしい場所に住む段階ではなかったんだと。
意に染まない環境だからこそ、自分らしさを模索する時期・修業だったのだと思います。いやだなーというエネルギーをためこんでいた分、それまで縁のなかった鎌倉への引っ越しもできたのだと思います。
7.豊かさとは
~素直に好きなことだけを選ぶことのできる自分であること~
―暁子さんにとって、豊かさってなんですか?
素直に好きなことだけを選ぶことのできる自分であること、だと思います。情報がいっぱいあると迷う。自分の中の勝手な倫理観に縛られたりもする。けれども、自分のバランスが取れていると自分にあったものを選べます。子どもと遊んで、旦那さんとお茶をする、というだけで本来満たされるんです。
そういう意味で言えば、引っ越した後の方がいろいろと偏った考えから解放されたので、ちょっと豊かになったかもしれませんね。焦っているときは、ハウツーというか方法論を求めてしまうけど、方法論よりも、自分の感覚に耳を澄ませて、自分に合うことをする方がいいと思います。
本当の意味で満たされると、お腹がいっぱいでそれ以上はいらなくなる。けれどもジャンクフードを食べていたら、どれだけでも食べれてしまう。
引っ越したときも、新居だから色々家具を買おうと思っていたんです。けれども、一つ一つを丁寧に選んでいたら、たくさんの家具はいらないな、かえって部屋が広くつかえていいなと思うようになりました。
予算がないってことは、必要がないってことなんだと思います。たぶん、へんなねじれや思い込みがなければ、自分の好きなものを選べる自分になるということは、すごく簡単なことなんだと思う。だから娘には、そういう環境をなるべく用意してあげたいと思っています。
8.郊外へと引っ越すことへのアドバイス
~暮らしと人と自然のバランスについて体感した~
―横浜市へと引っ越すことになりましたが、鎌倉に引っ越してよかったと思いますか?
もちろんです!鎌倉に住んだ経験は、自分に合う場所に住んでみたけれどうまくいかなかった…という話ではなくて「必要な時に本当に必要な経験ができた」ということだと感じています。
多分この時期に鎌倉市でゆっくりと過ごさなければ娘を妊娠しなかった気がしますし、暮らしと人と自然のバランスについて体感したことがたくさんあったので、これからの家族での暮らしにすごく大切な経験だったと思います。今振り返っても、夢みたく楽しかったです。直感に従ってよかったなぁと思っています。
―住環境の改善のために鎌倉(郊外)に引っ越したからこその経験をもとに都会から、郊外に引っ越したいとおっしゃる方にアドバイスはありますか?
引っ越してみたいという思いがあるなら、ぜひ気軽にトライしてみてください。違っていたらまた引っ越せばいいし、体験ってすればするほど、しなやかで強くなれます。「思ったより簡単なことだった」という体感は、これからの人生を歩むうえですごく自分を自由にしてくれます。
まとめ
・深くまで話し合って、「2人ともが納得する」選択をする。
・自分にとって自然な形はどこで住むことなのか?を考えたら、環境をあきらめて、家族をとることだった。
・引っ越しを重ねたことで、物事の良さはそれぞれにあって多面的なんだと実感した。
・豊かさとは、素直に好きなことだけを選ぶことのできる自分であること。
・自分の感覚に素直でいる事で、必要な時に本当に必要な経験ができた。
・引っ越してみたいという思いがあるなら、ぜひ気軽にトライしてみてください。違っていたらまた引っ越せばいい。

『私たちの等身大から生きる、現在進行形の暮らし。』
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